さて、なかなか自分の中で整理がつかなかったのでエントリ出来ずにいたのだが、おそらく世界中が注目している11月2日のアメリカ大統領選挙まで、残り1週間を切った。この二月ぐらい、共和党大会から、TV討論までそれなりに関心をもって行方を見守っているのだが、相変わらず事前調査ではほぼ互角か、数ポイント、ブッシュ有利というまま推移している。過去のデータによれば、現職の大統領が続投する場合は、事前に5%以上リードしていないと、態度を決めていない人の大半は対抗候補に投票する傾向にあるため、当選できないと言われているが、今回は事前調査でまだ態度を保留している人の数が極めて少なくなってきていること。また(民主主義を標榜する国家としては極めて低レベルな次元で破綻しているのだが)、投票の集計の一部に不正が働かれる可能性が極めて高いこと(既にネバダ州で共和党陣営のOBが民主党支援者の事前登録を勝手に集計したうえ破棄し、これにより民主党支援者の一部の人が投票日に投票できなくなるという疑惑が持ち上がっている)などから、ブッシュの当選、もしくは集計判断不能で選挙の結果は弁護士たちの手にゆだねられるのでは、などとという予測も多く飛び交っている。
まさに国の意見が真っ向から二分されている感じなのだが、正直個人的にはブッシュ支持者がいまだ半数近くいるというのがどうにも実感として理解できない。
アメリカの大統領選は州ごとに集計され、各州で過半数を取った候補にその州の全ての選挙人の投票数が加算される。(制度について詳しくはこちらなど) 私がいまいるカリフォルニアなどは民主党支持が強いので、ブッシュが選ばれる可能性は極めて少ない。実際身の回りの知人でブッシュに投票するという人はほとんど知らないし、一般に知識層のリベラルな人はブッシュに批判的な人が多い。というわけで、誰がブッシュを支持しているのかが実感として見えにくいのだ。
海外からの視点で見ると、2000年以降のネオコンのアメリカ一国ご都合主義やいまや大儀無きイラク戦争など、外交面でブッシュなど二度とごめんだという向きが多いと思うが、実際内政の面でも過去のブッシュ政策への批判は強く、減税を続けたものの、特にそれで恩恵を得た層は上位1%の富俗層と法人に限られており、急激な国の赤字増加、医療福祉の悪化、失業率の増加などなど、中間取得者から貧しい層の生活環境は悪化している。そんな中で誰がブッシュに未だ投票したがっているのか、報道や人から聞いた話しなどを総合してみると、
・(言い方は悪いが)田舎の無知な層
こむずかしいリベラルは大嫌い。アメリカはいい国だ。だから我々は一体となって政府を支持するべきだ。という人たち。かなりステレオタイプな言い方だが、実際にこういう人たちは存在する。アメリカの中部では生まれてから一度も自分の州を出たことがないという人が数多く存在する(アメリカ成人の1/3以上はパスポートを持っていないらしい。ちなみにカナダとメキシコはパスポート無しでもいける)
マイケル・ムーアの映画「華氏911」の印象的なシーンでこのような家庭の奥さんが登場する。祝日は星条旗を掲げ、国のためと信じて息子を兵隊に出していることを誇りに思っているが、息子の戦死をきっかけに全ての考えが変わる。日本人から観ると、言い方はひどいが馬鹿にすら見えるのだが、この奥さんのかつてのような感覚で共和党を支持する人は確かに存在し、そうした無知なお人好しに語りかけるという意味でおそらく「華氏911」にはたいていの日本人には実感できない意味が存在する。
・現在恩恵を受けている富俗層と経営者ら
これは当然ブッシュの方が自分の生活が得するのだから当たり前。ただ投票者の中に占める割合は低いだろうと思われるのだが、侮れないらしい。一つには彼らに従属した生活を維持するために間接的にブッシュを支持するものたちが周囲に含まれる。日本では最近西武の破綻が問題化しているが、問題が発覚するまで堤オーナーに言われれば従わざるを得なかった人たちがいたように。
また、この国はばかげたアメリカンドリームを信じる人たちが結構いる。今は上位1%の富俗層にはたどり着いていないが、俺もいつかは、という人たち。こういう人たちは上位1%の人たちと同じような行動様式を取りたがり、同じ候補者を支持する傾向にある(その理由が今の自分にとって得することではなくても)
・キリスト教保守層
町山さんのアメリカ日記でも度々説明されているが、この人たちにとっては世界で戦争がおきてようが、アメリカの兵隊が何人死のうが、イラク人が何万人死んでようが、貧しくて医療を受けられない人がアメリカにいようが関係ない。共和党が「ゲイの結婚と中絶は絶対認めない」といい続ければ常に支持する。日本ですら公明党の組織票が侮れないのだから、宗教観の強いアメリカではなおさらなのだろう。(個人的にはこんな宗教なら理解したくも無いが)
・ポスト911保守主義
「テロで世界は変わってしまった」というやつですね。ベストの解答ではないが、アメリカが攻撃を受けないためには専制攻撃やむなし。対外外交は強気であるべしというタイプ。TV討論やアメリカの政治Blogではこのタイプの右派が一番目立つ(アホかとおもうぐらいほんとに多い。リベラルな人たちはこうしたTVなど話半分で観ていると思うのだが、最初にあげた田舎の正直なお人好したちが、このタカ派の言い分を信じるという構造もありそう)。こういうアメリカ人の困ったところは、なぜ自分たちがテロの対象となったのかその原因を深く探求しようとしない。たとえ分析しても解決策は力づくになる。個人的には、中東にイスラエルという爆弾を抱えている以上、こうした姿勢を貫く限り、根本的な解決には気の遠くなるような時間がかかり、相当の血を流さない限り終わらないと思うのだが。
一方で、こうしたタカ派の中で最近、ケリー支持に転向している者も出始めているらしい。「むなぐるま」に詳しいエントリがあるが、イラク戦争まで支持していても、ブッシュの戦後処理は下手すぎるというのが大きな理由のようだ。ケリーに政権が変わったとしても外交政策が一変することは事実上ありえないので、両者を天秤に掛けた結果、ブッシュを見限ったということだろう。この辺の動きがブッシュ再選へのアキレス腱になるかもしれない。
かなりステレオタイプな書き方になったが、このまんまの人たちというのはさすがにアメリカ人の半数近くもいるとは思えない。
結局上記のような見解と、イラクでアメリカの兵隊から一般市民まで犠牲なっているという事実も含めて、皆いろんなことを秤にかけているのだろうと思う。こうしたときの秤のバランスがどこにあるかということを考えたときに、アメリカ人は戦争を実感として知らな過ぎる(国内の911テロには恐怖し二度と起きてほしくないと思っているが、アメリカがイラクの前線で何をしてるかを実感として感じることが出来てない、たとえ考えていてもそれらのバランスが甘い)というのが、他国からみたアメリカのもっとも大きな問題で、その意識のずれが、海外とアメリカでのブッシュ支持率のずれの一因となって現れているのだろうという気がする。
果たして、選挙の結果はどうでるのでしょうか・・・
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